1.5 零次元の計算から得られる見通し
< Last Update : Jan. 18 2008 >
反応モデルが手元にあれば,装置の二次元モデルを作成し,装置全体のシミュレーションを行うことも容易になってきましたが,表面と気相の両反応を考慮した CVD のシミュレーションでは,成膜速度分布を得ることは簡単でも,その結果をどう活用するか,というのは,全く別問題となります.
詳細な検討を行う前に,簡易なモデルで気相だけ,或は気相を表面の両方を考慮した簡易的な検討することも,有意義な場合が多々あります."論文から学ぶ - その1" では,構築した反応モデルから得られた情報を元に,零次元の計算で流量依存性を Excel で簡単に検討可能なことをご紹介しました.ちなみに,mathematica では,変数を指定した範囲で振り,計算結果がどのように変わるかをインタラクティブに操作し,結果をその場で眺めることも可能です.
Fig. 1 mathematica の Manipulate を使ったインタラクティブなグラフ化
一番下のグラフは,横軸は流量,縦軸には成膜速度を示しており,"論文から学ぶ - その1" の two film-forming species model で計算される Fig. 4 総流量に対する成膜速度 に対応しています(反応レートやその他の値はやや異なります).
反応レートやチャンバ(反応炉)の容積,成膜する面積を変化させた時の流量依存性を一目で見ることが出来ますし,横軸にとる変数を変更するのも簡単です.
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装置形状の影響や成膜速度の分布を議論するには,どうしても二次元又は三次元の計算が必要ですが,気相中にどういうガス種( species )がどの程度存在し得るか,といった検討も零次元でも可能です.CFD-ACE+ の平衡モデルを利用し,気相中の species についての知見を得ることができます.
以下は,一次元の計算モデルに CFD-ACE+ の平衡モデルを適用し,AlGaN CVD で使われている気相中の species の割合が温度にどう依存するかを計算してみた一例です(計算条件は,大気圧,初期の質量分率:TMAL/TMGA/NH3/H2 = 0.003/0.001/0.629/0.367 を仮定しています).
Fig. 2 平衡モデルを利用した AlGaN プロセスで生成する species
この例では,表面反応は考慮していないので,成膜に寄与する species の増減をみることは出来ませんが,どのような温度でどういった species が存在しうるかを容易に把握できます.例えば,TMAL や TMGA は容易に NH3 と反応する一方で,CH3 や ALN は温度が高くなるほど増える傾向にあることが分かります.
なお,この平衡モデルの計算は,3秒弱で終わりました.計算条件を変更して計算し直すのも容易です.
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零次元・一次元の計算モデルを利用して見通しを良くし,どのような結果が予想されるかを事前検討することにより,計算時間の掛かる二次元・三次元の検討をより効率良く行うことが可能と考えられます.
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