CFD-ACE+ を用いたプラズマシミュレーション : GEC Reference Cell
(
CFD-ACE+ Plasma Simulation : GEC Reference Cell )

CFD-ACE+ は,ICP( Inductively Coupled Plasma )や CCP( Capacitively Coupled Plasma )に代表される非平衡プラズマの解析にしばしば利用されています.汎用シミュレータとしての特徴として,2次元だけでなく,3次元にも対応します.また,DCP( Direct-Current Plasma )や熱平衡を仮定した ICPトーチ,DC arc 等にも適用が可能です.流体モデルをベースとし,半導体製造プロセスや近年注目を浴びている大気圧プラズマもカバーします.

以下では,GEC(Gaseous Electronics Conference)Reference Cell を用い,実測と計算結果を比較した論文を参考に,比較的低圧力の CCP の計算例をご紹介します.なお,論文では ICP についても述べられていますが,ここでは,Gaseous Electronics Conference Capacitively Coupled Plasma (以下,GEC-CCP) を取り上げます.

参考文献:

Two-Dimensional Self-Consistent Radio Frequency Plasma Simulations Relevant to the Gaseous Electronics Conference RF Reference Cell
J. Res. Natl. Inst. Stand. Technol. 100, 473 (1995)
Dimitris P. Lymberopoulos and Demetre J. Economou

GEC-CCP の構造は,Fig. 1 のような軸対称の形状となっています(注:以下の図は,計測エンジニアリングシステムで取り扱っている COMSOL の Plasma モデリングに関する速習セミナー資料に無断・無許可で使用されているようですが,弊社の著作物です).

Fig. 1 GEC-CCP の構造

シミュレーションでは,二次元軸対称モデルとして取り扱いました.金属内部の電界を一定と考え,電極やチャンバの厚みは計算領域から外したモデルを利用します.以下は,左側に計算領域のアウトライン,右側に計算格子(計算グリッド)を示しています.モデルの総セル数は,3494です.

outline and computational grid for GEC-CCP

Fig. 2 GEC-CCP モデルのアウトラインと計算格子

電極近傍は,やや細かいグリッドを使用しています.

CFD-ACE+ は,電子のエネルギー分布を考慮するための Kinetic Module を利用することもできますが,ここでは,電子のエネルギー分布はマクスウェル分布に従うとし,標準的な流体モデルを利用しました.用いたモジュールは,Flow,Heat Transfer,Chemistry,Plasma,及び,Electric の5つです.低圧の CCP では,ガス温度を一定と見なしても通常問題はありませんが,定性的な傾向を得る目的で考慮してみました.

計算条件は,論文の中で選ばれているものの一つを選びました.なお,今回のモデルでは inlet や outlet は考慮せず,ガスは封止されています.

Table 1 プロセス条件

周波数
13.56 MHz
圧力
13.33 Pa
RF電極の Vpp
100 V

以下に,代表的な計算結果を示します.

■ 電子密度の周期平均(Ne_avg),及び,電子温度の周期平均(Te_avg)

Ne and Te of the cycle average

Fig. 3 電子密度(左)と電子温度(右)の周期平均の結果

■ Ar+ 及び,Ar*の数密度分布

number density of Ar<sup>+</sup> and Ar*

Fig. 4 Ar+ 及び Ar* の数密度分布

■ 電位分布の周期平均(Pt_avg),及び,吸収電力の周期平均(Pw_avg)

Electric Potential and Power of the cycle average

Fig. 5 電位分布(左)と吸収電力(右)の周期平均の結果

■ 考慮した気相中の反応レート(以下は,弾性衝突),及び,ガス温度

Reaction Rate ( momentum transfer ) and gas temperature

Fig. 6 気相中の反応レート(左)とガス温度(右)

論文では,電子密度に関し,電極間の中央にあたる面内の径方向分布を測定した結果と,シミュレーションの結果を比較しています.本シミュレーションで得られた結果も,論文で示されている実測結果と比較し,定性的・定量的に同等の結果が得られています.


■ Stochastic heating を考慮した計算例

 CFD-ACE+ の新しい version ( V2010.0 )から,stochastic heating(統計加熱)を考慮する option が追加されました.周波数が 13.56MHz の GECRC では,計算結果がガラッと変わるようなことはありませんが,同じ条件ですと,stochastic heating を考慮することによって,Ne がやや高くなるようです.以下に,この option を考慮して計算結果(Te 及び stochastic heating)のアニメーションを示します.

Fig. 7 Te(左)及び Stochastic Heating(右)

 伸縮するシース端で stochastic heating が大きな値を示す様子がうかがえます.

 ここでは紹介していませんが,60MHz の CCP で計算し直したところ,全吸収電力の約半分が stochastic heating となり,周波数が高くなるとその影響が無視できないことを確認しています.


更新履歴:

Nov. 9 2010 : Fig. 7 を追加
Feb. 11 2009:Fig. 1 changed
Jan. 23 2009:up

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