プラズマシミュレーション用の輸送係数・反応レート定数算出ツール: BOSPROM

プラズマ流体シミュレーションでは、ガス種やその反応モデル、圧力などに応じて、電子のスオームパラメータ(移動度や拡散係数など)や反応速度定数のデータを事前に用意する必要があります。電子速度分布関数(EVDF)については、Maxwell 分布や Druyvesteyn 分布を仮定する従来の方法に加えて、電子衝突断面積データを用いて Boltzmann 方程式を解くことで得られる現実的な EVDF に基づいた方法がよく用いられています。この方法では、EVDF から計算されたスオームパラメータのテーブルデータ(Lookup table:LUT)を計算時に参照します。信頼性の高いプラズマシミュレーションを行うためには、適切な EVDF を使用することが非常に重要です。

EVDF の計算方法(Boltzmann方程式の解法)には、二項近似法、モンテカルロ法(MC)、プロパゲーター法(PM)などいくつかの方法があります。 計算プログラムとしては、二項近似法の BOLSIG+、LoKI-B などが有名です。また MCプログラムの Magboltz、METHES、LoKI-MC も知られています。 MC 法と PM 法は厳密解法の一種として知られています。 PM 法は、二項近似法よりも計算精度が高く、MC 法よりも計算速度が速いという特徴があります。 PM 法の詳細については この論文をご参照ください(著者版の電子出版物は北海道大学附属図書館 HUSCAP コレクションの ここ から入手可能)。

北海道大学の菅原先生は、PM計算コードを開発し MC法と同等の精度が得られることを実証しました。 しかし、複数のガス種 (混合ガス) で使用したり、プラズマ モデル用の LUT を準備したりする程には実用的ではありませんでした。

このたび菅原先生のご協力により、計算コードをより多機能なものに拡張し、グラフィカル ユーザー インターフェイス (GUI) も開発しました。 また、新規開発した独自の 改良計算法 も取り入れました。 このプログラムの名前は、 BOSPROM® (BOltzmann Solver by PROpagator Method) です。 このツールを使えばプラズマシミュレーション用の LUT が容易に作成できます。

以下に BOSPROM の概要を示します。


図1 は、プラズマシミュレーションでは適切なEVDFを使用することが重要であることを示したものです。

図1


図2 は PM 法に着目した、Boltzmann 方程式の解法の説明図です。

図2


図3 は BOSPROM の特徴のリストです。

図3


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図4 は BOSPROM の衝突断面積データ処理パネルの一例です。グラフ表示にはフリーソフトの GNUPLOT を用いています。

図4


図5 は BOSPROM の計算条件設定パネルと計算途中結果表示の一例です。

図5


図6 は BOSPROM の計算結果表示パネルの一例です。

図6


図7 はグラフ表示で指定可能なパラメータのリストです。

図7


図8 は Ar ガス中の RF (13.56 MHz) 電界下で振動する EEDF (electron energy distribution function)、 EEPF (electron energy probability function)、 EVDF (electron velocity distribution function) の計算例です。

図8


図9 は BOSPROM のプラズマシミュレーション用の LUT 作成パネルの一例です。

図9


※ 実際の計算例は近日中に追加する予定です。


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