フィラメントモデルを利用したシャワーヘッドの三次元シミュレーション
( Modeling of 3D showerhead using filament model
)

半導体製造プロセスでは,ガスの流れを分散する目的でシャワーヘッドと呼ばれる多数の孔を開けたプレート状のものをしばしば用います.熱CVDやPlasma CVD(PCVD)だけでなく,ドライエッチング(Dry Etching)で利用される場合もあります.孔数が多い場合,シャワーヘッドを多孔質体と見なすことによって,porous media を用いたモデル化を行うことも少なくありません.

ところで,シャワーヘッドの部分を solid として考慮し,気体の流れに対する壁での摩擦や表面反応を考慮したい場合もありますが,この場合,porous media では十分な取り扱いが難しくなります.孔径が非常に小さく,孔数が多い場合は,一つ一つの孔から吹き出すガスの流量はかなり小さくなり,わき出し(mass source)としてモデル化するのも一つの方法です.

CFD-ACE+ では,filament model と呼ぶ一次元モデルを併用することにより,孔数が 1000個を超えるような場合でも柔軟に対応することが可能です.以下では,filament model を利用して 1200個の孔をモデル化した例をご紹介します.

3-D simulation model ( 1/4 of the whole domain )

Fig. 1 計算モデル(3次元:1/4モデル)

このモデルの特徴は,node を共有しなくて良い点です.

一般的に,シミュレーションでは計算領域内の node(grid の交わる点)が連続していることが必要とされ,その grid の作成に長い時間(工数)が掛かります.しかし,この filament model は node を共有する必要がないため,レイヤーを重ねるように作成し,ソルバーで一緒に計算することが可能です.そのため,grid 作成に要する時間を低減し,また多くの場合,総セル数を大幅に(桁で)低減することが可能で,計算時間も非常に短くなります.

ここでご紹介している計算モデルは.対称境界を利用し,1/4モデルとしました.排気口(outlet)は,四隅にあると仮定しています.図1に示した図は,CFD-ACE-GUI でモデルを読み込んだ時の様子で,1200個の孔が 400x300 mm2 の範囲に 10 mm 間隔で並んでいます.原点は向って左側,サセプターを仮定している中心点としています.

原点付近を拡大した様子を図2に示します.

filament model : 1-D inlets

Fig. 2 シャワーヘッドをモデル化したフィラメントモデル(中央付近)

フィラメントモデル(filament model)は,inlet と outlet を持ちます.filament model の inlet は,showerhead の板を仮定した solid 内に,また outlet は,showerhead 直下の fluid の領域に位置しています.

主な計算条件として,圧力」133.3 Pa,総流量は 1.2e-6 kg/s(一つの孔あたり 1e-9 kg/s)としました.

以下に計算結果を示します.

始めに,シャワーヘッド近傍の fluid 領域における速度ベクトルを図3に示します(ベクトルの長さ・大きさは一定).中央付近(原点の近傍)では,ベクトルは下向きですが,チャンバーの outlet に近づくに連れて,少しずつその outlet に向う流れに変わる様子が分かります.

Velocity Vector near the showerhead

Fig. 3 速度ベクトル(showehead の直ぐ下)

図4に,立て断面を2つ作り,速度分布のコンターを重ねた様子を示します.

Velocity vector and Velocity magnitude in X- and Y-cut

Fig. 4 シャワーヘッド直下の速度ベクトル,縦断面(2つ)の速度コンター

以下,Z断面(水平面)の速度のコンターを上から下へとずらした様子を示します.

Velocity Magnitude ( Z-Cut 1 )

Fig. 5 速度コンター(Z断面-1)

Velocity Magnitude ( Z-Cut 2 )

Fig. 6 速度コンター(Z断面-2)

Velocity Magnitude ( Z-Cut 3 )

Fig. 7 速度コンター(Z断面-3)

Velocity Magnitude ( Z-Cut 4 )

Fig. 8 速度コンター(Z断面-4)

速度の最大値は,Z方向の値が低くなるにつれて高くなり,outlet に向って流れが少しずつ集っていることが分かります.

今回は孔からの流出量を一定としていますが,面内の流量分布(又は,showerhead 上面の圧力分布)を考慮する場合は,porous media によるモデル化と一緒に検討することで対処できます.

filament model は ascii file を使った設定が可能で,ICP のアンテナ(電磁場のソース)をモデル化することも可能です.

なお,Fig. 8 に示した outlet 近傍の円筒の部分は矩形の領域とは別に grid を作成し,途中の面を arbitrary inteface で接続している例です.詳細に興味のある方は,弊社までお問い合わせ下さい.

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